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あまり知られていないことですが、葬儀社は多くの広告を出稿しています。チラシはもちろん、バス広告、駅のホームの看板、電柱看板とありとあらゆるところに広告を出しており、ラジオやテレビCMまで出稿している企業もあります。それは身内に不幸があった時にいち早く思い出してもらうためで、病院で息を引き取った時点で「指名」されなければならないからです。
各病院には複数の葬儀社が待機しています。多くは輪番制で「仕事」を分け合います。もちろん、ご遺族が葬儀社を指名すれば、そちらが優先されるのですが、たまたま「当番」だった葬儀社が、ご遺体を自宅や葬儀場に搬送してから業者の変更を申し出ることは困難です。それは、搬送した業者が10万円単位 (筆者取材による平均)の「搬送料」を請求するからです。
一方、葬儀を発注すると「搬送料」は基本料金に組み込まれ「無料」同然となることから、一度ご遺体を搬送されてしまうと、他社に乗り換えにくい仕組みになっているのです。だから「指名」を得るために広告を打ちます。
O社長の葬儀社でも広告を大量に出稿しています。駅看板、バス広告、なかでもチラシには力を入れており、自社を中心とした営業エリアを4ブロックに分け、そのうちの2ブロックずつに対し2週間おきに新聞折込チラシを配布しています。
チラシには「保存版」と書かれ、所狭しと情報が詰め込まれ、料金プランはもちろん「お客様との10の約束」と題したミッションステートメントに葬儀の豆知識、有名テレビ番組への出演歴が掲載されています。そしてここにもありました。
「続きはWebで」
チラシには葬儀社の名前が入った「検索窓」が描かれ、検索ボタンにカーソルが重なります。
チラシを見てWebサイトを訪問する人は少なくありません。携帯向けサイトを持っているなら、QRコードを用意することで検索する手間が省けますし、チラシを見る層はよりお得な情報を得るために積極的に行動します。ところが、O社長のホームページにアクセスした人はラビリンスに迷い込みます。チラシに掲載された内容とホームページに掲載されているサービスが異なるからです。
チラシに目玉として掲載された「家族葬」は40万円。ホームページのイチオシプランは同じプラン名を冠していて42万円。両者の違いは葬儀会場と火葬場を往復するマイクロバスの差ですが、両者を並べて、ひとつひとつを見比べなければ気づきません。というより、大抵の訪問者はこう思うでしょう。
「2万円値上げされている」
これこそ、わざわざアクセスさせておいて不信感を与える「続きはWebで0.2」です。
10の約束もサイトにはありません。かわりに「10の安心」がありますが、まったく違う内容になっており、約束を信じた訪問者の安心を損ないます。ほかにもチラシとホームページの違いは多く、何よりチラシのほうが情報量が多いのです。理論上、「無限大」の情報掲載スペースを持つホームページの長所が生かされていません。チラシの情報量が充実しているのは、毎月のように作り替えるなかでブラッシュアップされたからで、料金の違いも隣接するライバル葬儀社の料金改定への対抗措置でした。約束が安心に変わった理由も同じです。それらの変更がホームページに反映されていないのです。
にもかかわらず、「続きはWebで」と誘導するのは「ライフカード」のCMの影響です。チラシからホームページへ誘導すれば、身内の不幸に混乱するなか、葬儀の準備に追われる遺族が他の葬儀社を検討する時間がなくなるだろうという目論見です。Webへの誘導は「囲い込み」。客の不幸につけ込むようなやり方という批判はともかく、囲い込んだ先で不信感を与えているのですから、すべては台無しです。
しかし、O社長だけを笑うことはできません。「続きはWebで」と広告代理店の口車に乗った企業の大半が「0.2」だったのですから。
Source: petapeta